3Kどころか9K?病院の「看護師不足問題」の原因

民間病院の今後について 現役看護師が調べてわかった民間病院の抱える問題

辞めていく看護師たち

辞めていく看護師たち この稿のテーマは「看護師不足」です。今までに「高齢化社会」「医師不足」など、日本の医療現場にまつわる問題について触れてきましたが、新卒の看護師として働き始めたころから現在に至るまで、いくつかの病院で勤務した経験のあるわたしが、もっとも身近に感じたことのある問題は、やはりこの「看護師不足」でした。わたしはいま現在も、民間病院で看護師として働いていますが、以前勤めていた病院で感じた、この「看護師不足」の問題はとても深刻なものでした。

なぜ看護師が不足するのか?

数ある職業の中から、看護師という職業を選び、難しい国家試験に合格し、晴れて免許を手にした人たちが離職してしまうのは何故なのでしょうか。その理由としてあげられるのは、まず、思い描いていた理想と現実のギャップが考えられます。昔から「きつい・汚い・危険」という3Kが、その仕事内容を表す言葉でしたが、今では、9Kとまで言われるほど大変な仕事になっていると実感されています。その要因としては、職務内容が多様化・多忙化していることが挙げられます。

多様化・多忙化している看護師のしごと

看護師の職務はひと昔に比べると増えている、と私の以前の上司も言っていました。たとえば、今までは医師が行ってきた注射や点滴を、看護師が行うようになったり、カルテの整理や記録などに費やす時間が、以前より増しているのだそうです。
特に、看護師は女性が多いですから、結婚や出産を経た看護師にとっては、育児と家事、仕事の両立は難しいものがあるでしょう。そのことで、出産後に復帰できない方が多くいることが、離職率の増加に拍車をかけている、と言ってもいいくらいなのです。つまり、医師不足の問題とは違い、国家資格を受ける人数が減っているから看護師不足になるのではなく、実際には有資格者が復職できる環境が整っていないことが、「看護師不足」の問題の実際の理由となっているのです。

「看護師不足」問題への国の対応

この問題に対して、国が行っている対策のひとつに、2006年に診療報酬改定で導入された新看護基準というものがあります。今までは、患者さん10人に対して看護師1人という割合で看ていた基準を、患者さん7人に看護師1人と変更したのです。そして、その基準を満たしている病院には、高い診療報酬を支払う、というようにした制度です。しかし、これによって基準を満たそうとした有資格者の獲得に乗り出した病院は多くありましたが、それはますます「看護師不足」の格差を生んでしまったようです。

人材不足対策の入門記事