病院が抱える医師不足問題

民間病院の今後について 現役看護師が調べてわかった民間病院の抱える問題

医師数の絶対的不足

医師数の絶対的不足 前述では「高齢化社会」の問題について、さらにそこからくる「医療の現場における人材不足」について触れましたが、今回はそのうちのひとつである「医師不足」の問題について触れていきたいと思います。わたし自身も医療の現場には勤めていながらも、医師不足の問題を肌で感じることは、あまりありませんでした(むしろ看護師として、医療の仕事に従事するわたしとしては、看護師の不足を感じることのほうが、以前の職場では多かったような気がします)。しかし、今回改めて「医師不足」について調べてみると、この問題もまた、なかなか深刻であることがわかってきました。

医師が足りていない?

厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査は2年に1度行われていて、年末時点での医師の戸籍を調査しています。2008年の調査では、医師総数は28万6699人で、人口10万人に対しての医師数は224.5人となり、2006年の調査から比べると7.0人の増加がみられます。参考までに、2007年の調査ですが、OECD(経済協力開発機構)加盟国の人口1,000人に対しての医師数が3.1人ですから、日本はその平均を大きく下回っていることが、これらの調査の結果から知ることができます。

「医師不足」はなぜ起こるのか?

日本の医療現場における医師不足の問題を語るときに、その要因のひとつとしてよく語られるのは、2004年に始まった新医師臨床研修制度です。この制度は、研修医が出身大学の医局の枠にとらわれずに、自由に研修先の病院を選ぶことができるというものです。それが引き金となって、医局の崩壊、人員不足を招き、医局の関連病院(特に郊外や、僻地にあるところ)に、医師が送れなくなり、医師不足がより深刻化したと言われています。

厚生労働省の対応は?

日本医師会は2007年に「医療提供体制の国際比較」を発表しています。その内容は「日医は、偏在が医師不足の主たる原因であると言ってきたが、それに加えて、絶対数も十分ではないことがわかった」として、それまでの方針を転換します。厚労省の高官もまた、2007年に入って医師の絶対数の不足について言及するようになりました。そして、ついに、2008年6月、舛添要一厚労相のもと「安心と希望の医療確保ビジョン」が打ち出され、「医学部定員削減」閣議決定の見直しと一緒に、医師養成数の増加の流れが確かなものとなりました。今後はどのように変化、改善されていくのでしょうか。

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