日本の医療現場では、どうしていま「看護師不足」の問題が起きているのでしょうか。わたしもまた看護師として医療の現場に、いまも立っていますが、そんな私にもなんとなくその理由がわかるような気がします。では、その理由とは一体なんなのか。小林美希さんの著作『看護崩壊 病院から看護師が消えてゆく』(アスキー新書)では看護師不足の実態が書かれています。それをもとにいくつかの視点から看護師不足の現状を学びましょう。
「最近の看護師のしごとは、ひと昔前に比べると増えた」と、わたしの以前の職場の先輩も言っていました。数十年に渡って、病院で看護師として現場に立って働いてきた彼女の言葉ですから、おそらく間違いではないと思います。それは、たとえば今までは医師が行ってきた注射や点滴を、看護師が行うようになったり、カルテの整理や記録などに費やす時間が、以前より増していることがおもな要因だそうです。看護師1人あたりの仕事量が増えることで、果たしてどのような影響があるのでしょう。
「看護師」という職業に、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。男性看護師も、以前よりは多くなってはきましたが、やはり、白衣をまとった女性をイメージするのではないでしょうか。しかし、それは無理もないことかもしれません。2012年のデータでは、看護師全体に占める女性の割合は93パーセントとなっており、実際にも女性が圧倒的多数なのです。そのように女性が多い職業ですから、結婚や出産を経たわたしたち看護師にとって、育児や家事と仕事の両立は、とても難しいものがあります。そんな理由もあって、出産後に復帰できない方が多くいることが、「看護師」という職業の離職率の増加に拍車をかけているのが現状なのです。
現状では、国による看護師の労働実際調査というのは、あまり行われていないようです。地域や労働組合、一病院などによる調査はありますが、それだけをみてもいまの看護師を取り巻く労働状況は、かなり悪いようです。その証拠でもあるかのように、浮かび上がっている数字があります。全国の看護師数は約143万人で、年1.5万人ずつ増えていますが、その裏では毎年10万人もの看護師が離職しているのです。
そう、彼女たちはそのあまりにも過酷な労働環境に耐えられず、疲れ切って「バーンアウト」していくのです。看護師の仕事の「きつさ」の原因はいくつかありますが、いつまでもその原因が解決されない限り、この先もこの「看護師不足」の問題は解決されることがないでしょう。