「高齢化社会」「医師不足」「看護師の過酷な労働実態」など、改めて調べてみると、それは医療崩壊につながりかねないような現状がそこにありました。わたしたちのような医療の仕事に従事している人間にはもちろんですが、医療崩壊ということになると、そのサービスを受ける側の人たちにも大きく影響することにもなります。今、医療の現場に表面化しはじめているさまざまな問題について、学んで得た情報をみなさんと共有したいと思います。
「高齢化社会の到来」と叫ばれて久しい気もしますが、その波は間違いなく医療の現場である病院にも押し寄せてきます。厚生労働省の発表したデータでは2025年には、高齢者の人口は3500万人に達すると言われており、およそ日本の総人口の30%以上が高齢者ということになります。もちろんその影響は、医療の現場にも押し寄せます。高齢者の人口が増えるということは、高齢患者が増えるということであり、そうなれば病院の人材不足という問題に直面することになります。
長く看護師という仕事に携わっているわたしのかつての先輩はこう言っていました。「たしかに看護師の仕事は増えている。これじゃあなかなか戻ってきたいとは思わないでしょうね」毎年、看護師になる人の約9割が女性という中で、このまま労働環境が改善されることがないと、たとえば出産や育児のために一度離職した人が戻ることは減り、離職率ばかりが上がりつづけ、ますます看護師数は減ることになるでしょう。ここでは医師不足問題とはまた違う、看護師不足の問題にも目を向けてみたいと思います。
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いまも現役看護師として働くわたしが、現場で働いていて一番肌で感じるのが、この看護師不足の問題です。以前の職場で感じたこともそうでした。看護師としての仕事そのものの量は増えてきているけれど、その反面、人は辞めてゆくことはあっても、なかなか増えず、現場に残されたスタッフたちが疲弊してゆくのは時間の問題でもあるかのようにみえました。医師の不足もとても深刻な問題ですが、それを支える看護師の不足という問題もまたなかなか深刻です。
日本の医師数は人口1000人あたりの数が約2.1人と、OECD加盟国の平均である3.1人を大きく下回っています。では、なぜそのような現状になってしまったのでしょうか。要因のひとつとしてよく語られるのは2004年に始まった新医師臨床研修制度です。それが引き金となって、医局の崩壊、医師の偏在、人員不足を招くようになったと言われています。国もこの問題を解決しようと手を打ってはいるようですが、果たしてその成果はどのくらい出ているのでしょうか。