看護師定着の切り札?病院の短時間正職員制度とは

民間病院の今後について 現役看護師が調べてわかった民間病院の抱える問題

短時間勤務制度で看護師定着を

短時間勤務制度で看護師定着を 高齢化社会を迎えた昨今の医療現場の最前線では、活躍する看護師さんの重要性はますます高くなっています。しかし、わたしたち看護師の90%以上が女性であるために、結婚や妊娠、出産や育児などにより、「仕事と家庭の両立」が困難なこととなり、離職を余儀なくされるという問題が今も多く持ち上がっています。これらのライフイベントによるキャリアの一時中断または離職に加え、苛酷な労働環境によるバーンアウト、夜勤のある交代制勤務や、残業を厭わない人でなければ去らざるを得ないような従来の画一的な働き方、さらには7対1配置基準の導入による看護師の激しい争奪戦など、複数の要因が重なった結果、一部の大病院を除く全国の医療機関で深刻な看護師不足が起こってしまったのです。

労働力を確保をするための様々な取り組み

経験が豊かで、かつ指導的な役割も期待される中堅層がいなくなってしまうことはキャリア形成上においても、「子育て」という人としての経験を看護ケアに活かすことができなくなってしまうわけで、それは医療機関と患者さんにとって多大な損失となります。そんな状況の中で、看護師さんの確保・定着を促進するためにワークシェアリング、夜勤や休日勤務の短縮・免除、院内保育の充実など、働きやすい環境を整備するなどの取り組みを行う医療機関が増えてきたのです。

効果をあげている「短時間正職員制度」

数ある取り組みの中でも、とくに効果を上げていて期待できるのが、全国の約2割の医療機関が導入しているといわれる「短時間正職員制度」というものです。この制度は、短時間勤務や週3日勤務であるにもかかわらず正職員としての待遇(社会保険の適用、退職金、昇進・昇格、福利厚生)を受けられる、というもので、出産や子育てなどの際にも、ブランクを生じさせることなく、働き続けることができます。
実際に、この制度を利用した看護師さんからは「制度を利用することで、育児中でも仕事を無理なく続けることができた。一旦、離職期間が長くなってしまうと覚悟していたので、とても助かる制度だ」「出産で辞めざるをえなかった他の病院の友人からは、私の職場にもそんな働き方があれば、辞めずに済んだのにと言われた。」「自分の両親から”子供が小さいうちは仕事を辞めて、家に居るべき”と言われたけれど、制度の説明をしたら”理解ある病院で働けて良かったね”と納得してくれた」など、出産・育児と仕事の両立に関するものが大半でした。

導入した病院では離職率が低下している

「短時間正職員制度」を導入した多くの病院では、離職率が低下したというデータがあります。看護師の離職理由のトップ3(日本看護協会の「看護白書」参照)である「妊娠や出産」「結婚」「勤務時間・超過勤務が長い」や、または、離職した看護師さんが現在就業していない理由のトップ2である「育児・家事と両立しない」という結果からもわかるように、ライフイベントと仕事の継続の関係性は大きいことが分かり、それらに対する短時間正職員制度の効果が大きいことは間違いないと言っていいでしょう。

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